ヤマハ藤田 シーサイドクラブ
NEW POSSIBILITIES
ハイパフォーマンスな走行性能とゆったりとした居住空間を併わせ持つ32フィートエクスプレスクルーザー「REGAL 32 Express」。
顧客満足度を優先する「REGAL」の哲学を継承したニューモデルが日本初上陸。操作性に優れたドライビング性能は、パワーボート
としての走り自体を存分に楽しませてくれる。そんなブランニューを神戸沖でシートライアルした。
text: Atsushi Nomura
photo: Kai Yukawa
special thanks: YAMAHA FUJITA
http://regalboats.jp
■■ リーガルボート 32Express
PDF版は こちら>>>REGAL32Express
哲学がある。
「リーガル(Regal Marine Industries, Inc.)」のボートを見ると、いつも思い起こすのが、この言葉だ。
アメリカ合衆国における独立系ボートビルダーの中では最大規模を誇る「REGAL」。1969年の創業以来、カック(Kuck)・ファミリー
によって経営されており、今もその息子たちを中心とした家族で経営を続けている。その経営方針にはまさしく「哲学」がある。創業者の
ポール・カックが提唱した「最高の顧客満足を得るためのボート造り」を使命として掲げ、その精神を受け継ぐボートたちを作っている。
アメリカではボートビルダーを、まるでマネーゲームのコマのように売買することが盛んに行われてきた。
その結果、創業以来培われてきたブランドの方向性がぶれ、大きくブランドイメージが崩れてしまい、製品も売れなくなるという悪循環に
見舞われ、再び売りに出される……。そしていつしか消えていく
数多くのブランドを見てきた。その点、創業者の息子たちが経営に携わり、孫たちが現場に立ち、ファミリーで哲学を守り育んでいる「RE
GAL」は特殊な例なのかもしれない。1 ~2年おきに行われてきた同社の発表会には、世界中のディーラーの他にジャーナリストたちも招か
れる。筆者も何度か参加したが、ディーラーだけでなく、普段から辛口のコメントをする海外ジャーナリストたちも「リーガル・ファミリー」
として受け入れる。そんな「REGAL」ブランドの生み出すボートたちは常に独創性に溢れている。今回紹介する「REGAL 32Express」もそ
ういったモデルの一つだ。
「32 Express」が最初にラインナップに登場したのは、2013年に発表された2014年モデルから。今回試乗したモデルは2015年登場の20
16年のイヤーモデルである。「32 Express」は1年早くデビューした「REGAL3200」と同じ「Hunt Design」の手による32フィートのOce
anTracハルを採用し、従来型のディープVハルに比べてより効率の良い走行性能とより高い安定性を実現している。実際に走らせてみると分
かるが、高速でも引っかからずに非常にタイトなターンが可能である。しかしそういったマニューバをこなしながらも艇体の挙動には安定感
がある。引き波などに当ててみてもしっかりとした剛性感が感じられる。ソフトな波当たりとドライコンディションもOceanTracハルならで
はだろう。また立ち上がりの速さも素晴らしい。
静止状態からスロットルを一気に入れてもほとんどハンプを感じさせずに5秒以内にプレーニングする。
バウライダータイプの「3200」に比べると重心は若干高いように感じるが、トリッキーなボートコントロールも自在なためランナバウト的な愉快な走りも体感できる。マックスは約35ノット。さすがに40ノット近くをマークする「3200」のような爆発的なスピード感とは異なるものの、今回の試乗艇の250馬力 2基掛け(MerCruiser4.5 250 Bravo3 DTS)という仕様でも十分なパフォーマンスが感じられた。エンジンバリエーションもいくつかあるようだが、合計500馬力で十分だと思う。
OceanTracハルは低速域での直進安定性も特筆できる点だ。スローで走らせていてもかなり保針性が高く、ステアリングへの反応も素直である。今回の試乗艇は2基掛けでバウスラスター付き、しかも素直な操作性のおかげで、離着岸も容易だ。
現在、「REGAL」の「Express」シリーズには「26」、「28」、「30」、「32」の4モデルがラインナップしている。28フィート以上の3モ
デルはすべてタワーが搭載されており、「28」と「32」は前傾タイプ、「30」は後ろへ傾斜したタワーとなっている。「32 Express」のタワーは電動可倒式。日本でも干満差のある水域では橋を通り抜けられない時間帯が出てくるし、リバークルーズなどで低い橋をくぐるケースも多い。そんな時にスイッチ一つで倒れるタワーは非常に便利である。またタワーの前後にはビミニトップを装着できる。さらにウインドシールド、およびアフトデッキを含めてコクピット全体をオーニングで覆うことも可能だ。冬場にはこれがありがたくなるだろう。
コクピットは「REGAL」らしいかなり凝った造りだ。後方右舷側から左舷側へ対角線状にウォークスルーがあり、ウォークスルーの右側はカウンター。カウンタートップにはウェットバーと
収納式の電磁グリルが設けられ、下部には冷蔵庫が備わっている。カウンターの前部に幅広な二人掛けのヘルムシート。左舷側後部には大型のサンベッド兼シートが設けられているがこれは前後に電動で動く。背もたれは後ろ向き、前向き、フルフラットに変更できる。サンベッドを一番後ろへ動かしてコクピットテーブ
ルをセットすれば、ゆったりしたピクニックスペースになる。その
前部はL字型の大型ソファ。短辺の背もたれも前向き・後ろ向きにアレンジ可能だ。長辺の背もたれの裏にはコクピットテーブルが収納されている。前部中央にはキャビンへのアクセスドアがあり、このドアはバウデッキへのアクセスステップも兼ねている。
バウデッキにはサンパッドをセット可能だ。
キャビン内は32フィートとは思えないボリューム感がある。特にヘッドクリアランスがあるのでさらに広く見える。コクピット下部にあたるミッドキャビンは、32フィートクラスとしては珍しいキングサイズのベッドスペースとなっている。ここはツインベッドとしてもキングサイズベッドとしても使用可能だ。さらにハンギングロッカーなども設けられている。キャビンの左舷には個室ヘッドとシンク&ギャレー。右舷には前部から続くL字型ソファーが配置されている。面白いのはフォワードバースだ。前後方向に短いバースだが、L字型ソファの短辺の部分が可動式でバースが伸びるように工夫されている。細かなアイデアがいっぱ
いの「REGAL」らしいアレンジである。実質2ベッドルームあり3~5名程度の宿泊が可能だろう。32フィートとしては高いレベルの居住性を誇る。
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ユーザーの使い勝手を最優先で考えた「REGAL」らしいアイデアと、オリジナリティ溢れる装備を32フィートという限られたスペースに巧みにレイアウトした「32 EXPRESS」。素晴らしい居住性能と高い走行性能を合わせ持つこのボートは、マリーナステイなどの静的なボート遊びも愉しめ、なおかつランナバウトの動的な遊び、走りそのものの楽しさも味わえる貴重な一艇である。 P.B.
SPECIFICATIONS . . . . . . . REGAL 32 EXPRESS
全長 9.8 m
全幅 3.2 m
喫水 0.9 m
重量 5.45 ton
燃料タンク 568 L
清水タンク 136 L
エンジン 2 × MerCruiser4.5 250 Bravo3 DTS最高出力 2 × 250 HP
問い合わせ先 ヤマハ藤田
TEL:079-322-8800
http://regalboats.jp
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