ヤマハ藤田 シーサイドクラブ
ボート遊びは「海遊び」だけがすべてではない。もちろん大海原をボートや水上バイクで駆け抜けるのも楽しいけれど、リバークルーズもまた魅力がいっぱいだ。関東地方は江戸時代から舟運が盛んで水路や運河が多数ある。今では浚渫しないと使えなくなってしまった水路も多いけれど、東京周辺にはまだまだ水上交通路として「生きている」運河や河川がふんだんにある。河を少し上り下りするだけで、景色は目まぐるしく変わり、いつもとは違う風景に出会える。そんなおすすめ東京のクルーズスポットをご案内しよう。
関東地方がまだまだ暑かった8月のとある日。普段、東京のボート免許スクールで使っているヤマハ・ベルフィーノと水上バイク(PWC)2艇で水上ツーリングに出掛けた。今回のリバー&ベイクルーズは、拠点である中川マリーナから中川を下り、荒川、東京ゲートブリッジ、東京港、隅田川を経て再び荒川、中川を経由して戻るというコースだ。
中川を行く
上平井水門の下流側
東京港を快走
中川マリーナは中川の中流域「中川やしおフラワーパーク」という公園内にある。つくばエクスプレスの八潮駅から車で10分ほど、ちょうど首都高三郷線(6号線)の高架と中川が交差するあたりだ。さっそく今回参加するベルフィーノと水上バイク2艇に分乗し、マリーナを出航する。ベルフィーノの周りを水上バイク2艇が前に行ったり後ろに行ったり、ベルフィーノの引き波で跳ねながらスラロームしながら進んで行く。中川はところどころにマリーナや船だまりがある。そのためスピードは頻繁にアップダウン。やはり係留艇のいるところで引き波を立てるのはマナー違反だ。多くのマリーナが並ぶ大場川との合流点近く、ちょうど三郷市と江戸川区・足立区の境が交わるあたりには警視庁所属の水上警察のボートが遊弋していた。水の上で、水警に出くわすとなんだかドキッとするのはなぜだろう(笑)。何も悪いことしていないんだけど……。
さらに中川を下流へ向けて進む。京成高砂駅の近くで中川は本流(中川)と新中川とに分岐する。新中川をそのまままっすぐ降りると旧江戸川に合流し東京ディズニーランドと葛西臨海公園との間から東京湾へと抜けられる。今回は中川の本流を進む。中川本流はしばらくジグザグに流れている。それまでの長閑な風景とは打って変わって東京下町風の街並みが現れる。さらに進み荒川とぶつかるところ(上平井水門)から中川本流は南流、荒川に平行して約10kmほど続き、最後は荒川に合流する。なお上平井水門は荒川の上流に沿って流れている綾瀬川と中川本流が合流、その下流すぐには荒川とつながる水路がある。そのため、このあたりは潮流と河の流れが複雑にぶつかり逆巻いている。ちょうど水門周辺が工事中だったためデッドスローで進まなければならず、まっすぐ走らせるのが大変だった。そのまままっすぐ中川本流を下りて行くと、正面からパトロールランプをつけた1隻のボートが接近してくる。
「ん?水上警察?」と、どきっとする。もちろん何にも悪いことはしてないのだけれど、臨検はいやだなぁ……がボートの形が水警ボートとは違う。徐行して接近すると、下流でボート(手漕ぎの競技ボート)レースをやっているという。そのため15分ほど待ってもらいたいとのことだった。それならば上平井水門脇の水路を抜けて荒川を下りた方が早い。中川を再び遡り、荒川へ抜けるために逆巻く水路を進む。狭い水路を抜けると一気に荒川の広い水面へ抜ける。荒川に出ると目の前に東京スカイツリーがどーんと見える。一応、今日の目的地はあの近くだ。
リバークルーズは慣れないと、ちょっと不安になることが多いかもしれない。でも実際にやってみると案外簡単。しかも普段陸上から見ていては分からない景色と出会えるのが大きな魅力だ。たとえば中川を走っているだけでも自然豊かな景色に始まり、東京郊外の街並みなど、日常とは違う視点からの風景に出会える。橋も下から見上げるのはなかなか新鮮だ。陸上からアクセスすると同じにしか見えない橋たちも一つ一つがまったく違う作りをしている。風景や建築物をじっくり眺めて走るのもリバークルーズならではの愉しみだ。
中川の中流域は比較的緑も多く長閑な雰囲気
係留船も多いのでところどころスローで進む
時には爽快に快走する
川にかかる橋も水面から見るとまた雰囲気が異なる
中川から荒川へと進む
荒川の中・下流域は、一気に水面も広くなり、視界も広がるので、まるでどこでも走れるかのように思えてしまう。でも両脇はかなり浅いところが多く、特に川がカーブしている部分のインサイドは流路の半ば近くまで浅瀬が広がっているところもある。水上バイクやジェットボートはあまり気にしなくても良いかもしれないが、本当にびっくりするくらい浅い箇所があるので、小型でもプロペラが露出しているボートの航行には注意が必要だ。ベルフィーノのような小型の船外艇であればほぼ真ん中を走れば問題ないが、たとえばかなり下流の葛西橋付近は危ない。ど真ん中が浅いため、かなり右岸寄り(東京寄り)を航行する必要がある(上流側から下流側を見て、右を右岸、左を左岸)。基本的に橋には名前が書いてあるので、その名前の下を通り抜けることをおすすめする。川から見ると分かるが、葛西橋も右岸ぎりぎりに橋梁名が書かれている。
また荒川は独自の航行ルールが設けられている。たとえばエリアごとに「動力船通行禁止」・「船舶等通行禁止」などを標識で示している。「動力船通行禁止」エリアとは手漕ぎボートが通航できるように岸から約50m以内でのエンジン付きボートの航行を禁止にしているエリア。「船舶等通行禁止」エリアは河岸の自然環境保全のために原則として船舶の航行が禁止されているエリア。その他、引き波を立ててはいけないエリアや水上バイクの通航方法を制限するエリアなどがある。詳しくは国土交通省荒川下流河川事務所が作っている『荒川通航ガイド』をチェックしていただきたい。もっとも荒川下流はかなり広々とした水面があるので、かなり自由に走れる。町中の水路を抜けて一気に広がる広々とした川、さらには広大な海へ。テンションは走っているだけでもどんどん上がってゆく。
荒川をそのまままっすぐ下り続ける。荒川河口橋の下を通り抜け、左手に葛西臨海公園、右手に若洲を見ながら「海」へ向かう。葛西臨海公園の沖合も、荒川河口域の左岸側は浅瀬が広がっている。基本はまっすぐ海に向かって走ろう。そのまま若洲を通りすぎると、右手に巨大な橋が見えてくる。ゲートブリッジだ。(つづく)
荒川に出ると一気に水面が広々するが、ところどころ浅瀬も!!
周囲も風景も次第に変わってくる
そこはもう海。ゲートブリッジを遠望
さっそくゲートブリッジを抜けて行く
東京港をゆく