ヤマハ藤田 シーサイドクラブ
船外機というと世界的に見てもほとんどがガソリン。一部にケロシン(灯油)・ディーゼルを使用可能な船外機も存在している(いた)が、いずれも小型のものばかりだった。2016年に登場したスウェーデン製船外機はハイパフォーマンス、そして極めて画期的なディーゼル船外機である。
スウェーデン生まれのディーゼル船外機“OXE”
船外機は世界的に見てもガソリンが主流。日本ではかつてヤンマーブランドのディーゼル船外機が存在したが低馬力なものばかりだった。2016年、一風変わった船外機が登場した。スウェーデンの“CIMCO MARINE AB”が開発した“OXE DIESEL”だ。OXEは世界初の200馬力の高性能ディーゼル船外機であり、耐久性・燃費に優れ、低排出ガスが特徴である。
マリンエンジンの世界でも年々排出ガス規制は厳しくなっている。アメリカ合衆国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency、EPA)によるマリンディーゼル排気ガス規制は中でも最も厳しい環境規制の一つとして知られている。EPAのマリンディーゼル排気ガス規制は1次規制(Tier 1/最終年度2000年)、2次規制(Tier 2/最終年度2005年)、3次規制(Tier 3/最終年度2016年)と段階的に強化されてきた。EPA Tier 3は130kW(174.3馬力)以上のすべてのコマーシャルマリンディーゼル(商業船舶)、レジャーボート(24m未満など一部を除く)が対象。Tier 2に比べて排出ガスの内、NOx(窒素酸化物)とHC(炭化水素)はマイナス20%、PM(粒子状物質、Particulate Matter)はマイナス40%の削減が求められる規制だ。エンジンメーカーによると非常に難しい数値目標のようで各メーカーとも莫大な開発予算をかけて規制クリアを目指してきた。このような状況の中で登場したOXEはもちろんEPA Tier 3をクリアしている。
エンジンのベースは2リッターのGM製ターボチャージャー付きの自動車エンジン。これをマリナイズしている。機構上特徴的なのは、エンジンを縦置きせずに水平に設置している点だ。そして非常に革新的なのが駆動系の推力伝達をシャフトではなくプライマリーベルトを通じて行っている点だ。さらにプライマリーベルトのハウジングの向きを切り替えることで、ギア比を1.73:1から2.17:1の間で変更できるという。ベルト駆動により高トルクの伝達が可能となった。
さすがにディーゼル船外機ということで重量は350kgと重い。たとえばヤマハ4ストローク船外機F200FET(L)は226kgであり、やはり100kg以上重くなっている。しかし燃費を見るとさすがディーゼル、最高回転状態での燃費は同じ200馬力の船外機と比べてもかなり低い。4ストローク船外機の71L/h、2ストローク船外機の73L/hに比べOXEは43L/hと著しく低い。イニシャルコストは当然高いが、ランニングコストは低く抑えられる。その結果、ライフサイクルコストも素晴らしい。コマーシャルユースなどであれば、約半年でガソリンエンジンのコストを下回り、3〜4年で半分以下に抑えられるという。
環境問題、ランニングコストなどあらゆる面でメリットを感じられるOXEのディーゼル船外機。当面はコマーシャルユースがメインとなると思われるが注目のパワートレインだ。
エンジンタイプ:ディーゼル
排気量:2.0L
インテーク:ターボチャージャー、インタークーラー
トルク:415Nm(2,500rpm)
出力:200馬力(4,100rpm)
燃料:軽油
重量:350kg
サイズ:994×1,880×678mm
オルターネーター出力:130Amp
始動方式:電動
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